【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
邂逅
その日は、雨だった。
地を激しい雨が叩きつけて、空では雷が鳴っていた。
「うわっ、どーしよ……」
おつかい先で、空を見上げて呟く少女。
轟く音に、少女は口をへの字に曲げた。
「凄い雨だね……。本当に帰る気かい?無理して帰らずとも、泊まって行っても……」
「ううん、大丈夫!ありがとうね、おじさん」
心配そうにそう言ってくれるおじさんにお礼を言って、少女はパパっと、雨具を用意する。
こういうことは、慣れている。
(雨ごときで、診察所を放れるかっ!)
―根っからの仕事の鬼である彼女は、決して、自分を甘やかそうとするはずもなく。
大事な薬草の箱、作った薬の入ってる箱、それと……
「よし!良かったぁ……これが濡れたら、困るもんね」
きちんと、お金も濡れないように保護!
「よし、じゃあ、また来るね!おじさん」
「―ちょっと待て?」
防具完璧!いざ!、と、雨の中に進もうとした少女の腕を掴むおじさん……ではなく、おじさんの息子・幼なじみの祥基(ショウキ)は呆れ切った顔で、少女こと李翠蓮(リ スイレン)を見下ろす。