【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―ハハハッ、相変わらずだなぁ。翠蓮ちゃん」
と、大笑いしながら入ってきた、おじさん二人組。
古くから馴染みのある、趙(チョウ)さんと練(レン)さんだ。
がたいのいいふたりは、年頃、推定だけど……三十代半ばかな。
二年前も、二人の力で救われた人はたくさんいる。
「結婚、おじさんとしとくか?」
「趙さんと?あ、良いかもー」
優しいし、美男だし。
悪い話ではない。
「ちょっ、おっさん!私の可愛い翠蓮を汚さないで!!」
「……相変わらず、過保護だなぁ。お前も変わんないよな、結凛」
「ってか、"おじさん”は傷つくぞ……」
「おじさんでしょ。私の未来の旦那の伯父なんだから」
ぎゅーっと、結凛に抱きしめられながら、翠蓮は笑う。
この通り、結凛には婚約者がいる。
有力貴族の坊ちゃんが、結凛に一目惚れしたらしく……それが、まさかの趙さんの身内だったのだ。
偶然も、偶然の話。
でも、一度会った感じ、優しい青年であった。
物腰の柔らかな笑顔は、男に厳しい結凛をほだしたほど。
「結婚相手、おっさんじゃなくて、外にいた美形はどぅだぁ?数人の男に囲まれてて、外套を被ってたが……中々の美男だぞ」
練さんが、のんびりと言う。