【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……しょうがない。子供は思い通りになるものでは無いからの。妹々(マイマイ)、気に病むことは無いぞ。それもこれも全部、祥星様の血です」
横で、皇太后が呟いた一言。
妹々というのは、後宮内で成立する姉妹関係を表す。
「しかし、姉様……」
本当の兄弟ではないが、親しみを込めてそう呼び合うのだ。
皇太后が妹々と呼んだので、親しみを込めて、楚太昭華も姉様と返す。
この二人は呼び方からして、仲の悪いわけでは無い。
そして、楚太昭華が黎祥を嫌っているわけでもない。
ただ、不仲で有名らしい黎祥と皇太后が一緒に行動しているのが意外でならないのだろう。
「鏡佳は恐らく、ずっと逃げ続けますわ。あの子のことですもの……きっと、駆け落ちとかしそうで……」
公主が駆け落ちは、かなり外聞が悪い。
そんなに、極悪非道に自分は見えるのだろうか。
肩を落とすが、まぁ、確かにそう言われても仕方ないのかもしれない。
―二年前に、あんなことをしていれば。