【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「皇太后」
「はい?」
「……聞きたいことが、幾つかあるんです」
「…………何でしょうか」
今、黎祥と皇太后の周囲には、数人の女官や宦官がいる。
彼らはどこの誰と繋がっているのか、分からない。
だから、そう気軽に会話できたりしない。
「少し、気分転換に……紫京(シキョウ)叔父上と話してみませんか?」
そう言うと、皇太后は驚きながらも、すぐに黎祥の言葉の意図を理解して、
「ええ」
と、微笑みながら、頷いた。
密談に、紫京殿ほど相応しい人物はいない。
その事は、皇太后も黎祥も嫌という程に理解していた。