【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「邪魔なんだろう?殺したいんだろう?ならば、栄貴妃と皇太后は消さねばな?」
「っ!!」
首を横に振るけど、笑みを深めるばっかりで、彼女は変わらない。
初めてあった時から、何も……何も、変わらない。
恐怖に顔をゆがめ、がたがたと震える彼女。
蝋燭の炎は怪しく揺れ、彼女は全身を震えさせた。
殺される。
頭を抱え、座り込む。
そこに、彼女付きの宦官達の姿はない。
これが、恐怖―……自分がつい先程まで、宦官達に与えていた苦しみ―……
やらねば、殺される―……ここは、そういう世界だと、知っていたのに。
その時。
「―そうよね、人を、一人殺すのも、二人殺すのも同じなのよね。良いことを教えてくれてありがとう」
「え……」
闇の中から、聞こえてきた声。
顔を上げると、滲む視界に映ったのは。
「―不格好ね、自業自得よ」
女官姿の、女。
女が握る短刀は、先輩妃に深く刺さり。
「お前っ……」
「あら、生きていたことが意外でした?」
倒れ伏した先輩を見下ろして、女は笑う。
「油断しちゃ、ダメじゃないですか。ねぇ、先輩?」
「生きて―……っ!」
「夢でも見ているのですか?フフッ、簡単に地獄へは行かせませんよ?」
目の前で繰り広げられる惨劇。
彼女は、震えが激しくなるのを感じた。
そういえば、この部屋の香はこんな匂いだっただろうか。
目眩がする。
息苦しい。