【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―翠蓮!?ここにいたのか!」
流星さんと入れ違いになるように顔を出した、祐鳳兄様は汗だくで、返事をしなかったことを怒っているみたいだったけど、立ちすくむ翠蓮を見て、何かを感じとったのだろう。
「……どうした?大丈夫か……?」
ゆっくりと近づいてくると、そっと、翠蓮の目元に触れて。
「兄様、私―……」
翠蓮は、兄に縋りついた。
行き場のない不安が、翠蓮を襲っていた。