【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「そんな顔、しないで。死んでないんだから」
まさか、こんなにも心配されるとは。
なんか、今日だけでたくさんの黎祥の表情を見れた気がする。
「革命の時から、翠蓮、あんたは変わらない」
ふと、練さんが呟く。
革命の際―戦火は下町にも広がり、とても、普通に生活できる状況ではない状況にまで追い込まれた時。
皆が逃げ回る中、翠蓮は黙々と薬草の研究をしていた。
何度も、結凛に手を引かれた。
でも、逃げることはしなかった。
「変わってないって?」
「自分を隠すのが上手で、人を救うことが上手。革命の際、断固として、家から離れなかっただろ」
「……あそこには母さん、杏珠(アンジュ)達が眠ってる。何より、兄さん達が帰ってくるかもしれない……そう思ったら、逃げられなかったのよ」
杏珠っていうのは、翠蓮の妹の名前である。
可愛い、可愛い妹だったのに、救うことは出来なかった。
「……翠蓮、ひどいことを言うようだけど、あんたの兄達は」
「知ってるわ。もう、生きてる望みも低いってことは」
結凛の苦しげな言葉に、翠蓮は淡々と返す。