【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
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「―朱杏果(シュ キョウカ)と申します。この度は、見ず知らずの人に、大変ご迷惑をお掛けしました」
目覚めた少女はハキハキと挨拶をすると、
「お礼に必ず、参ります。本日はこれにて」
「……」
年齢すらも推し量れない彼女は、そう言いながら、家を出ようとする。
そして、翠蓮、祐鳳、慧秀、麟麗、鈴華、宵華、叡季、祥基でその光景を呆然と見守る。
「って、いやいやいやいや!」
少女―杏果が足を踏み出す寸前、我に返った祐鳳兄様が彼女を止めれば、杏果は「?」―不思議そうな、顔をした。
「君、今からどこへ行くの?」
三日後。
祐鳳兄様、慧秀兄様と皇宮に向かうことになっている翠蓮は、祐鳳兄様の質問に耳を澄ませた。
流星さんの話だと、彼女は流星さんを暗殺しようとしていたらしいから……祐鳳兄様に頼んで、武器は取り外させてもらったんだけど。
「敵討ち」
兄様の質問にそう答えて、短剣を取り出そうとした手は―……ないことに気づき、勢いよく顔を上げる。
「眉間にしわ寄せてないで、とりあえず、飯食え」
「なっ……」
兄様は杏果ちゃんの眉間を指で押すと、
「腹が減っていては、何も出来ん。寝ている間、盛大に腹を鳴らしていたぞ。腹減ってんだろ?」
と、ニッ、と、笑いかけて。
「そんなことっ!」
反抗しようとした、杏果ちゃんだが。
―グゥゥゥ
隠せない、腹鳴。―つまり、空腹。
「―朱杏果(シュ キョウカ)と申します。この度は、見ず知らずの人に、大変ご迷惑をお掛けしました」
目覚めた少女はハキハキと挨拶をすると、
「お礼に必ず、参ります。本日はこれにて」
「……」
年齢すらも推し量れない彼女は、そう言いながら、家を出ようとする。
そして、翠蓮、祐鳳、慧秀、麟麗、鈴華、宵華、叡季、祥基でその光景を呆然と見守る。
「って、いやいやいやいや!」
少女―杏果が足を踏み出す寸前、我に返った祐鳳兄様が彼女を止めれば、杏果は「?」―不思議そうな、顔をした。
「君、今からどこへ行くの?」
三日後。
祐鳳兄様、慧秀兄様と皇宮に向かうことになっている翠蓮は、祐鳳兄様の質問に耳を澄ませた。
流星さんの話だと、彼女は流星さんを暗殺しようとしていたらしいから……祐鳳兄様に頼んで、武器は取り外させてもらったんだけど。
「敵討ち」
兄様の質問にそう答えて、短剣を取り出そうとした手は―……ないことに気づき、勢いよく顔を上げる。
「眉間にしわ寄せてないで、とりあえず、飯食え」
「なっ……」
兄様は杏果ちゃんの眉間を指で押すと、
「腹が減っていては、何も出来ん。寝ている間、盛大に腹を鳴らしていたぞ。腹減ってんだろ?」
と、ニッ、と、笑いかけて。
「そんなことっ!」
反抗しようとした、杏果ちゃんだが。
―グゥゥゥ
隠せない、腹鳴。―つまり、空腹。