【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「ハハッ、体は正直だな」
祐鳳兄様がそう笑うと、顔を赤くした杏果ちゃん。
「俺達は君の敵ではない。……話を聞かせてくれないか?」
「そうですね。翠蓮の美味しいご飯を―……」
「黒髪に、赤い瞳!皇族なんて、信じられるわけないでしょっ!!」
「……っ」
慧秀兄様の言葉に続いて、麟麗様がそう言うと、杏果ちゃんは身を退けて、そう叫んだ。
手を伸ばしかけた手を引っ込め、
「ごめんね」
そう、謝る。
麟麗様にとって、皇家はまだ重い。
逃げ出したと言っても、それは永遠に付きまとうものだ。
彼女の瞳が赤い限り、彼女はそれから逃れられない。
「ちょっと!姉様が親切心でやっているのに!」
「頼んでないわ!何も知らないくせに、しゃしゃり出てこないでよ!!大体、皇族がなんでこんな所に―……」
麟麗様の前に躍り出て、庇うような姿勢を取った鈴華様と睨み合う杏果ちゃん。
きっと、皇族に良い思い出がないんだろう。
悲痛な声を聞いていたら、そう感じる。
でもだからといって、麟麗様の事情も知らないのに、彼女に暴言を吐いてもいい理由にはならない。
興奮した猫のように、牙をむく杏果ちゃんにどう接するべきかわからず、翠蓮が麟麗様に寄り添っていると。