【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
祥基に睨まれた杏果ちゃんに同情しつつ、成り行きを見守る。
涙目で反論した杏果ちゃんの前にしゃがみこんだ祥基は、真正面から彼女に問いた。
「お前に何がわかるんだ」
「……」
「生きているのは、精々、十年と少しだろ。その姿なら、成人してねぇな?それで、麟麗の何がわかるんだ」
「っっ……」
祥基の雰囲気に耐えられず、恐怖を面に表した杏果ちゃん。
「お前に事情もあるんだろう。それを俺らは知らない。だから、お前のことを責めるつもりはない。赤目を嫌うってことは、皇族を憎んでいるんだろうな。先帝の御代は、本当に酷い有様だったから。でもな、だからといって、赤目の麟麗の手を叩いていい話にはならない。果たして、皇族として生まれたことが、そのものにとって幸せだったと思うのか?幸せだったというのなら、何でこいつがここに居るのか……その事情を、お前は理解できているのか?」
正論。
真正面から問われて、彼女は震える声で。
「っ、ごめんなさい……」
「……」
麟麗様に寄っていって、そう謝った。
「……こっちこそ、急に触れようとしてごめんなさい。父のせいよね。朱家のことは、覚えています」
麟麗様は申し訳なさそうに、そう言って。