【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
ちゃんと謝れるのは、いい事だ。
復讐心に囚われて動いたって、いい事は無い。
お礼を言ったり、笑えるってことはきっと、人間としては死んでいないってことだろうから。
「家を、知っているんですか……っ?」
「ええ。……私の仲の良い友達も、それで処刑されたの」
麟麗様の一言に、目を見開いた杏果ちゃん。
「誰かを恨まないと、やっていけないわよね。分かるわ。私もお父様を恨んで、恨んで、恨み倒して―……一言も言葉を交わすことの無いまま、死に別れた」
三年前。
革命の際に、先帝は黎祥の手により倒れた。
先帝に、子供への愛はあったのか。
そう言えば、皇太子がいたそうだが……。
「お兄様にだって、一度も会えずに―……」
「貴女にも、兄姉がいるの?」
杏果ちゃんは、麟麗様の『兄』の単語に反応して、
「お願いっ!皇族なら、お姉様を助けられるわよね?お姉様を、助けて―……」
「お姉様?」
祥基が怪訝そうに、目を細めて。
「お前、まさか、そのために乗り込もうとしていたのか?わざわざ、皇宮に?」
「……っ、だって、皇族はそこに住んでいるのでしょ」
バツの悪そうな顔をした杏果ちゃんだが……。