【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



ちゃんと謝れるのは、いい事だ。


復讐心に囚われて動いたって、いい事は無い。


お礼を言ったり、笑えるってことはきっと、人間としては死んでいないってことだろうから。


「家を、知っているんですか……っ?」


「ええ。……私の仲の良い友達も、それで処刑されたの」


麟麗様の一言に、目を見開いた杏果ちゃん。


「誰かを恨まないと、やっていけないわよね。分かるわ。私もお父様を恨んで、恨んで、恨み倒して―……一言も言葉を交わすことの無いまま、死に別れた」


三年前。


革命の際に、先帝は黎祥の手により倒れた。


先帝に、子供への愛はあったのか。


そう言えば、皇太子がいたそうだが……。


「お兄様にだって、一度も会えずに―……」


「貴女にも、兄姉がいるの?」


杏果ちゃんは、麟麗様の『兄』の単語に反応して、


「お願いっ!皇族なら、お姉様を助けられるわよね?お姉様を、助けて―……」


「お姉様?」


祥基が怪訝そうに、目を細めて。


「お前、まさか、そのために乗り込もうとしていたのか?わざわざ、皇宮に?」


「……っ、だって、皇族はそこに住んでいるのでしょ」


バツの悪そうな顔をした杏果ちゃんだが……。



< 387 / 960 >

この作品をシェア

pagetop