【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「流石に、皇宮には入れないと思うよ?」
翠蓮の言葉を聞くと、「どうして?」と、首を傾げた。
逆に聞きたい。
なんで、入れると思ったのか。
「お母様達は、普通に入ってたから……」
なるほど。
幼い頃の、知識のせいか。
「それは、お前が朱家の令嬢だったからで、母親はきちんと許可を取っていたんだろうな。だから、お前はそれについていけただけの話だ。後宮に、身内がいたんじゃないのか?」
「いたわよ?」
「……ほらな」
祥基の言葉に、目を瞬かせた杏果ちゃん。
「因みに聞きたいんだけど……杏果ちゃん、君、何歳?」
「十三」
慧秀兄様が質問に、ケロッと答えた彼女。
「十三……後宮に、入りたいの?今の皇族……つまり、現皇帝陛下を殺したいとか考えてる?それなら、俺らは現皇帝陛下の絶対的味方で、忠臣だから、君を殺してでも止めなくてはならないんだけど」
そんな彼女の言葉を繰り返しながら、笑顔でおぞましいことを言った慧秀兄様の顔を見て、
「今の、陛下は好きだわ……」
と、杏果ちゃんは漏らす。
「だって、家族の敵を討ってくれた人だもの」
「「「……」」」
「先帝に関わりがある、その子達の前で言うのもなんだけど……私の家族は何も悪いことをしていないのに、殺されたの。私と姉様はお父様とお母様が逃がしてくれたから、助かった。……想像出来る?目の前で慕った人達の首が落とされていく様を、怯えて泣く様を、傍から見ていることしか出来なかった私と姉様の気持ち……」
公開処刑。
それは、どれだけの屈辱だろうか。
冤罪ならば、尚更。