【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
宵の涙
『陛下、早くお世継ぎを……』
『ご寵姫を……』
『この国の未来をなんと考えて……』
―ああ、もう、うんざりだ。
聞き飽きた。
惚れた女?それを抱く?
惚れていない、後宮に家畜のように集められた美女を抱く?
そんなことをして、何が生まれる?
たくさんの、子が生まれる。
それが、国の未来に繋がるのか?
違う。……それは、国を滅ぼす。
『私は、今の、この国の下町を見てみたい』
革命前のこの国の惨状を知っておきながら、そんなことをいえた彼らの頭がわからない。
子がいたって、財政は傾き続ける。
後宮があったって、妃がいたって、黎祥にすべてを相手することなんかできず、ただ、彼女たちは牢獄の中で老いていく。
そして、嫁を取れない下町の者達が溢れ、民は少なくなっていく……そんな国の、どこに存在価値があると言うんだ?