【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……姉様を見つけたくて、歩き回ったわ。でも、見つからなかった。そんな時に『君のお姉さんは、ちゃんと幸せになっているよ』って、あの人に言われて……場所を問いつめたけど、教えてはくれなくて。つい、頭に血が昇ったの。気づいた時には、斬り掛かってた。そして、目覚めたら……」
翠蓮が、保護していた状況だったらしい。
「よく、無事だったな」
祥基はそう言って、杏果ちゃんの頭を撫でる。
齢、十三の少女が経験するには、重すぎる経験。
幼い頃から、人を信じられなくなるようなことばかりで。
「姉様を、見つけたいの。見つけて、姉様の口から聞きたいわ……『幸せ』なら、『幸せ』でいいから……」
この小さな子にとって、姉は唯一の希望だった。
それを見失ってしまったから、彼女は黒くなってしまったんだ。
「…………杏果ちゃん」
翠蓮は彼女の足元にしゃがみこんで、微笑む。
「私と一緒に、後宮に来ない?」
「え……?」
「私の侍女として、私の腹心となって、働いてみない?」
「……」
「朱家の令嬢を使うのは、少し気が引けるけど……約束するわ。貴女の身の安全と、お姉さんを探し出すことは」
元より、信頼出来る女人を探しておけと、李家からは言われていたから。