【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「貴女が私を信頼して、命を任せてくれるのなら……私も貴女に全てを託し、貴女を信じるわ。後宮には、とある目的で行くからね。絶対に裏切らない、私のためなら、命を捨てる覚悟でもしてくれる人が必要なのよ。……どう?」
「……」
翠蓮が提示した条件に考え込んだ、杏果ちゃん。
「……私、役に立つ?」
何も出来なくていい。
優秀な、女官はいらないの。
翠蓮が欲しいのは、信じられる仲間。
「甘い果実のある、後宮よ。どの者の讒言にも耳を貸さず、私の言葉だけを信頼すると約束できる?」
少し気を抜けば、殺される後宮。
翠蓮の微笑みから全てを察してくれてらしい杏果ちゃんは、
「叔母様が、妃だったから……ある程度は、わかっているつもりだわ。貴女を信じると言ったら……姉様を見つけてくれる?」
見上げられて、翠蓮は
「約束するわ。ただ……私の侍女は忙しいわよ?」
大きな瞳に溜まった雫を指で掬い、笑みを深める。
すると、彼女は
「やるわ」
力強く、翠蓮を見返して頷いた。