【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……李修儀様、顔色が悪いようですが」
若琳に指摘され、苦笑。
体調を案じられているようだが、何の問題もない。
「そうですか?眠れていないからかもしれません。陛下がお帰り次第、すぐに休みます」
……なんて。
そう誤魔化したけど、眠れていないわけじゃない。
逆に、黎祥の腕の中で、眠れなかったはずがない。
あんなにも安心するところは、両親に抱きしめられたこと以外、知らない。
「……」
部屋を出て、黎祥の眠る部屋に戻る。
引き出しを開け、傍にある水差しを手にして。
翠蓮は薬を飲んだ。
―これは、孕みにくくなる薬だ。
これから先、大切なものを増やすつもりは無い。
こうして、黎祥の妃としてやっていく以上、身ごもってしまう確率が高くなるから。
黎祥の夜伽を終えたら、この薬を飲んでいこうと思う。
(……だから、謝るのは私の方)
黎祥に抱かれている間、何度も謝られた。
黎祥は翠蓮を抱いている間、何度も謝ってきた。
『ごめん』と、
『こんな所に引きずり込むつもりはなかった』と。
翠蓮は自らの意思で、ここに入ってきたというのに。