【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
それどころか、後宮の三千の花々が求める皇帝の一夜の愛を頂いたにも関わらず、懐妊を避けようとしているのだ。
―自らの、決めた狙いのために。
こんな女のどこに、黎祥が謝る必要があるというのだろう。
今も昔も、翠蓮は変わらない。
自分のことしか、考えてない。
(黎祥が起きたら、これからの話と、そして朝餉を―……)
翠蓮は未来を考えながら、指折りをした。
そんな翠蓮の心は、ただ、空虚に満ちていた。