【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……」
龍睡宮―……何度来ても、不思議なところだ。
どこの宮とも違って、神秘的な雰囲気を醸し出しており、足を踏み込んだ人間を変な心地にさせる。
「……あれ?〇〇?」
扉の前で待機していると、現れた女性―知り合いの、練若琳が顔を覗かせて、女の名前を呼んだ。
「こんな所で何をしているの?」
人を疑うことが苦手な彼女は、女が何をしてきたか知らない。
どこまでも優しく、例え、その行為が法に触れていようが、練若琳は味方し、見逃すような……そんな、世話好きで、ある意味、お節介な友人だった。
「李修儀様への、謁見待ち」
「李修儀様?」
昨夜一晩で、彼女は皇帝の妃となった。
今夜も、皇帝が彼女の元に通えば―……その時点で、栄貴妃の権威はなくなり、この後宮では李修儀の名が広がるだろう。
そこに合わせて、李修儀が懐妊でもした時には―……この先、翠蓮以上に現皇帝の心を奪う者が現れなければ、翠蓮は皇后への道は確実である。
―最も、それが、栄貴妃側の狙いでもある訳だが。
「……また、つまらなさそうな顔してる」
そばに来た若琳に頬をつつかれ、女は嫌そうな顔を丸出しにした。