【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「あの子達のことを、探しているのよね?」
そんな女の拒否すらも無視して、触ってくる若琳に諦め、頷くと。
「私から、李修儀様に聞いておきましょうか?」
「え?」
「貴女は違うでしょうけど、私はこれでも、陛下の信頼された密偵だからね。一通り、李修儀様の事情は知っているの。栄貴妃様も知っているけど……話される前に、栄貴妃様の傍を離れた貴女が知っていると、色々と騒ぎになるでしょう」
「……」
若琳の言う通りだった。
確かに、自分は自分の目的のためにフラフラとしすぎた。
ただ、復讐することしか、考えていなかった。
「……私、ようやく知れたの」
若琳の提案に肯定も否定もしないまま、女は呟く。
「というより、思いだした、かな?」
「……何を?」
若琳は続きを促してくれる。
女は視線を落として。
「……昨日まで元気だった姉さんがいきなり死んで、後宮という所がどんな所か思い知っていたつもりだった」
「……」
女には、姉がいた。
年の離れた、妾腹だった女を愛し、優しくしてくれる姉が。
妾腹ゆえ、正妻に大切にされるはずもなく、父もまた、正妻の目を気にして、女を放りっぱなしだった。
決して、大きな家だとは言わない。
姉の夫であった、先々帝が悪いとも言わない。
必ずしも、自分の妃を愛せるわけがない。
女は幼かったため、先々帝のことを詳しくは知らないけれど、姉の遺した手紙から、先々帝は愛せぬ代わりに、先々帝なりに、姉を大切にしてくれていた。
それこそ、愛妃の念妃のように。
友の、柳皇太后にするように。