【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「ちょっ、何ですか!この状況!!」
右見ても、左見ても、皇族、皇族、また、皇族!!
何っじゃ、こりゃ!!
「俺が声をかけたんだ。人数は多い方がいいだろ?お陰様で、健康人が増えまくって……翠玉、あんた、やっぱり、天才だよっ!」
驚いて、呆然とする翠蓮を横目に、ニカッ、と、いかにも高星様らしい笑顔。
「それにな、ここに兄上も来たんだよ」
「……」
変に、嫌な予感がした。
(ここで、第二皇子とか……)
「兄上、、というのは……?」
恐る恐る尋ねると、
「黎祥兄上!」
元気よく、答えてくれた高星様。
(……ですよねー。やっぱり、皇帝陛下ですよねー)
少しでも、淡い期待を抱いた自分に呆れる。
頭を抱えていると、
「そういや、翠玉、新しい李家からの妃の付き人になったんだって?」
と、高星様が言ってきて。
「あ、はい。まぁ……」
「栄貴妃じゃなかったんだな」
意外そうに言われるけど……李妃が、翠蓮なんだから仕方ない。
いくら、日中は身代わりで引きこもり妃を演じてもらっているにしても、夜伽までさせる訳にはいかんし。
「李妃はどんな人なんだ?」
高星の質問に、翠蓮は驚く。
「え?……興味が?」
「まぁ……だって、兄上の寵愛を、一身に受けているわけだろ?しかも、もう、ひと月も。懐妊も近いかもなー」
(……ごめんなさい。それはないです)
薬を飲んでいる限り、翠蓮が身ごもる確率はかなり低い。
子を授かる訳には行かないのだ。
薬師としての順翠玉と、
妃としての李翠蓮を、
二足の草鞋を、履いている今は。