【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「恐らく、犯人は―……全ての、近くにいるもの」
「……」
「答えなさい、灯蘭。貴女、何を見たの?」
すると、彼女はゆっくりと体を起こした。
その表情は暗く、重く、そしてまた、酷かった。
「……寝てないの?」
麗宝様が近づいて、尋ねると。
「姉様っ!」
灯蘭様は、麗宝様に抱きついて。
「た、助けてっ、私のせいで……私のせいで、雄星が……っ!祐鳳もいないのに……っっ」
ガタガタと身体を震わせて、麗宝様に縋り付く灯蘭様。
「死んじゃうわ!雄星が……皆が、この後宮が!全部、全部―……」
「落ち着きなさい、灯蘭」
兄の祐鳳は本日、本来の職場に顔を出していると聞いている。
灯蘭様の護衛ということがまず、異例中の異例である兄にとって、定期的な顔出しは大事なこと。
「―何か、手伝えることはあるかい?」
「っ!?」
突然聞こえてきた声に、身体を退かせる。
現れたのは、にっこりと怪しい笑みを浮かべた流雲様。
いつから居たのか。
彼は―……駒ではなかったのか。
消された妃達は……何を知っていた、女狐の取り巻きだったのか。
にっこりと笑うその笑みが、とても怖く感じて。