【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……流雲」
「麗宝、僕は何をすればいいかな?」
「……」
第二皇子・淑流雲。
彼は"何のために”、後宮にいたのだったか。
「兄様……」
涙で、顔がぐしゃぐしゃな灯蘭様は震える声で。
「祐鳳を、呼んできて……」
―とうとう、崩れてしまった。
「わかった。待ってて」
その笑顔の意味は、何か。
この皇子の、目的は何か。
(どうして―……なんでも知っている?)
翠蓮のことも、
栄貴妃と兄の関係も―……どうして、どうして。
わからない。
そして、怖い。
笑顔の裏に隠された、それが。
それを知ることが、凄く―……。
去っていく後ろ姿を眺めていると、
「……流雲は、犯人じゃない」
と、一言、麗宝様が言った。
「これは、間違いないよ」
二人の間に築かれた、何かのおかげか。
歳の近い彼女が言うと、説得力があって。
麗宝様のことも信じられるわけじゃないのに―……麗宝様の確信めいた言葉を、翠蓮は信用しそうになってしまった。