【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……皇太后に毒を持ったのは、誰だ」
綸言を下すと、宦官は恐る恐る。
「皇太后付きの侍女が、自白致しました」
と、告げた。
皇太后付きの侍女……そんなものは、一人しかいない。
(あの者が、皇太后に毒を盛るか……?)
忠義心の塊のような、そんな女人だったはずだが。
「……そのものは」
「後宮警吏が捕らえておりますが、平然とした態度で……皇太后様よりの厳命により、拷問は受けておりません」
流石、皇太后。
これは、何者かに仕組まれているとしか考えられない。
その仕組んだものこそが、本当の犯人だ。
何故なら、皇太后が一妃の時から仕えているその者に皇太后以上に守りたいものがあるはずがないし、
その者は昔こそは、皇太后に―……。
黎祥は、宦官の背後に目を向けた。
現れた影を見て、察する。
「―最後に、順徳太妃様からの伝言でございます」
「叔母上から?」
嵐雪は宦官の言葉に反応して、影の存在には気づかないようだ。
相変わらず、気配を消すのがお上手なことで。
「後宮に再度現れました順翠玉より、皇帝陛下、並びに順内閣大学士、皇太后様の訪れをお待ちしているとのことで―……けれども、皇太后様は臥せっておられます。どうすれば……」
「―勝手なことを言うんじゃないよ。悪党め」
「っ!」
宦官が、目を見開く。
距離をとる。
けれども、それすらもなかった事にするように、一気に距離は詰められた。