【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
何も出来ない状況を、ただ、歯痒く思う。
苦しんで、訪れる死の影に逆らう雄星を見ていると、少し前、言葉を交わした日のことを思い出した。
『厚かましい願いだとわかっていますが、いつかは誰かを守る、陛下の……黎祥兄上のようになりたいのです。病弱だから、王にはなれません。代わりに、少しでも……兄上を、兄上の子供を、助けていきたいんです』
そんな雄星に、未来の夢か?と尋ねると、はにかんだ幼い未来ある弟。
そんな未来が来ればいいと、願ったのに。
また、奪われるのか。
この後宮という、魔窟に。
そして、いつかまた、奪われるのだろうか。
翠蓮すらも―……。
「―雄星様!雄星様!!私です、翠玉です!私の声が聞こえますか!?聞こえるのなら、手を握り返してくださいっ!」
少し、震えは落ち着いてきたように見える。
だが、返事はない。
足の治療にかかりつけだった翠蓮は足の治療を終え、すぐに頬に触れる。
そこで、何かに気づいたように雄星の服を捲った。
「順徳太妃様」
そして、静かに黎祥の隣にいる順徳太妃に近づいてきて、
「ひとつ、お聞き致します」
「ええ……」
震える、順徳太妃。
そんな彼女の手を握りしめて、翠蓮は微笑んで。