【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「雄星様に、食べられない食べ物はございますか?」
「食べ、られない?」
「ええ。生まれてこの方、口にするだけで嘔吐や呼吸困難、痙攣を起こした食材が、彼の食べらないものです」
翠蓮は雄星を横目で見ると、
「赤い発疹があり、もしかしたら、その類の可能性があります。最悪の場合、心不全を起こす可能性も……」
「助かるわよねっ!?」
―ここで初めて、順徳太妃が取り乱した。
ずっと、毅然として……先々帝の妃として、踏ん張っていたんだろう。
でも、耐えられなくなった。
「雄星は生まれた時から、病弱で……三歳の頃に蕎麦を食べて、蕁麻疹がでたわ。それは、覚えてる。でも、最近は蕎麦など、私の食事でも見なかったわ。厳密に、抜くように言ってあるし……」
「……」
翠蓮は少し考え込んだ後、
「……これだけでは、死に至らぬと思ったか」
と、毒蛇に目を向ける。
毒蛇は既に、小刀で一突きされており、事切れていた。
「麗宝様、申し訳ありませんが、御膳房で食譜を頂いてきて貰えませんか?陛下の命ということで」
「なっ、何を勝手な……っ!!」
黎祥が許可した訳でもないのに、勝手にそんなことを言った翠蓮に向かって、側仕えたちが非難を浴びせる。
嵐雪も黎祥も、ましてや、皇太后ですらも、何も言っていないのに。
すると、翠蓮はそちらを向いて。