【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―遅くなったっ!」
そして、そう間を開けないうちに駆け込んできたのは、祐鳳と二人の男。
「持ってきたよ、師(センセイ)!」
「師はやめろ。―この患者の症状は、食べ物の拒絶。一通り、簡単な対処はしたから……お前は足を頼んだ。で、あんたは薬を作って」
「分かった」「りょーかい!」
年は外見的に、黎祥と雄星とそう変わらぬくらいの年頃。
顔立ちが似ているから、兄弟だろうか。
手際のいいそれらを眺めていると、雄星と同い年くらいの少年が、
「えっ、ちょっ……これ、皇子!?勝手にやって大丈夫!?」
と、焦って。
翠蓮は、
「許可とったから、大丈夫。自信が無いのなら、触るな」
と、返す。
少年は翠蓮の言葉で安心したのか、
「いや、得意だけどさー。ちょちょっと、作りますか!―あ、そだ。残りの薬草、後で持ってくるってさ」
と、腕まくり。
「小(ショウ)が?」
「うん。小鈴(ショウリン)も来るって!」
「麟(リン)は来ないわよね?」
「勿論」
淡々と会話しながらも、全員、手先器用に治療していく。
「凄い……」
幼い子供の動きに驚きを隠せていない嵐雪を見た後、皇太后に目を移すと、皇太后は何故か、震えていて。
黎祥の視線に気づくと、すぐに団扇で顔を隠してしまった。