【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



そんな皇太后を不審に思いながらも、彼らに視線を戻す。


嵐雪をはじめとして、ここにいるものはその手際の良さに、目を惹き付けられていた。


「豹(ヒョウ)、傷口を洗ってね。それと、星(セイ)、枸杞(クコ)の根皮とかある?柴胡(サイコ)でも良いんだけど……」


「山橘(ヤマタチバナ)なら、あるけど」


「乾燥してある?」


「うん。枸杞もねー、あったと思う」


鞄の中を漁る星は、何かを見つけると顔を輝かせ、


「あったよ!」


と、翠蓮に差し出す。


「良くやった!」


翠蓮は笑顔になり、星の頭を撫で回す。


「これで、解熱させよう。ついでに、山橘も見つけたから、解毒もできるな」


「うん。この傷跡だと、恐らく……って、死骸あるんだ。この種の蛇なら、山橘でいいだろうね」


星は薬草をすり始め、色んなものを加えていく。


豹は冷静にそう言って、


「皇子が危篤とか言うから、何事かと……大体、太医は?」


と、首をかしげた。


その時、全員、ハッとした顔をして。


「考えが回らなかったわ……」


「最近、翠蓮しか頼ってなかったから……」


などと、言葉を漏らす。


「助かるのか?」


黎祥がそう、翠蓮に尋ねると。


翠蓮は力強く頷いて、


「見てください。頬が赤くなってきたでしょ?これなら、大丈夫です。先程は、青白くて……冷たくなっていたから、焦ったんですが」


と、嬉しそうに語る。


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