【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
翠蓮は、何も変わらない。
いつだって、他人の命を大事にする。
「ところでさ、足にも蕁麻疹があるんだが……これ、十一年前に星に起こったものと同じだ。今回は、食物拒絶反応で片付けていいんだな?」
どうやら一通りの治療が終わったらしい豹が、片付けをしながら問う。
「ああ……。ふたりが、私の家の扉を、初めて叩いた時の話ね。あの時は父様が対応したんだよなぁ。懐かしい。―そのつもりだけど、どうして?」
懐古に耽りながらも、尋ねかえす翠蓮。
すると、豹は顔を曇らせて。
「いや……被りすぎて、怖いっていうか」
「何がよ?」
「お前の父には話したが、俺にも色々あってな……知らないか?星は知らないんだが」
「だから、何がよ?」
翠蓮の繰り返される訝しげな声に、豹は桶に溜められた水で軽く手を洗うと、それを布で拭いて。
「星、挨拶するぞ」
と、ちょうど薬を作り終えたらしい星の肩に手を置いた。
「あ、そっか」
星は豹と共に、黎祥や皇太后の前に来ると。
「我が国の偉大なる皇帝陛下、並びに皇太后陛下、親王殿下、そして―……「豹揮(ヒョウキ)!?」長公主様、この度は私どもの様な卑賤な身を使って頂き、感謝の念に耐えません」
深く、拝礼して。
途中で割り込んだ、女性の声に乱されることの無いその姿勢。
星は戸惑って、女性を見ながら、豹を見る。