【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「麗宝姉上が、私の名前を呼ぼうとするから」
「だって、弟が無事だったんだもの!驚いて当然でしょう!?」
―……弟?
麗宝姉上……?
会話の中に、衝撃的な言葉が。
「―はっ!?」
けれど、それに一番大きな反応したのは、嵐雪だった。
「どういうことですかっ!!」
叫んだ嵐雪に落ち着いた麗宝姉上は、
「どういうことって……そのままの意味よ。淑豹揮(シュク ヒョウキ)。年は、二十四。先々帝の第五皇子」
と、答えて。
「あ、兄上が……っ?」
星は驚愕な事実に、座り込む。
「……」
翠蓮はただ短く、嘆息しただけで。
というか、ちょっと待て。
嵐雪が叫んだので驚く機会を失ったが……第五皇子といえば。
「皇太后陛下―……いえ、母上」
そばで、豹……豹揮兄上が礼をする。
「お久しゅう、ございます」
団扇から、そろりと顔を出した皇太后。
その瞳には涙が溜まっていて、
「―馬鹿者っ、無事なら、無事と連絡せぬかっ!」
と、震える声で抱きついた。
「よく、生きてたの……すまぬ、すまぬ―……。妾に力がないばかりに…すまぬ、すまぬの、豹揮……」
「謝ってばっかりですよ。母上」
そんな皇太后の背を撫でて、豹揮兄上は苦笑。