【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「母上は権力争いに、興味がありませんでしたからね。仕方ありません。それは全て、勇成兄上のせいですから。それに、下町の生活も悪くないんですよ。母上が御無事で、この国の女性の代表として立っていて下さったことが、私の励みでしたし。―そうだ。紹介しますね。星」
驚いていた星はよろよろと立ち上がると、皇太后と豹揮兄上の元に行って。
「母上が私に託された、二人の子供……そのうちの一人、母上がお産みになった、私の同母弟の清宸(セイシン)です。第八皇子の」
「なっ―……」
「えっ?」
「そうだったの!?」
「〜っ」
「……」
驚く嵐雪、星本人、麗宝姉上、笑いを堪えている流雲兄上、そして……無言の翠蓮。
行方不明の皇子二人は、やはり、下町にいたか。
「そのくらいの年頃とは思うておったが……なんじゃ……そなたらも、鳳雲様に……あの人はどこまで優しなんだ。妾は助けてあげられなかったのに……」
淑鳳雲―これで、第五皇子、第六皇子、第八皇子を救っていたことになり、本来ならば、尊重される存在だったのに。
「―泣かないでくださいませ、皇太后様」
顔を覆って悔やむ皇太后の肩に触れて、翠蓮は笑う。
「父は、この国の未来を憂いておりました。そして、どの子でも優しく迎え入れたのです。父がやりたくて、やったこと。そこに、恩とかそういうものは要らないのです」
「……っ」
そして、翠蓮の父親が淑鳳雲であることを知らなかった嵐雪は不思議そうに、目を丸くするばかりである。