【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「父は、二人のことをとても可愛がっていましたわ。そして、言っていました。『母上のような、素晴らしい人になるんだよ』と。父様はきっと全てを知った上で、匿ったのですわ。ですから、罪悪感を感じられる必要はありません」


ここではあくまで、順翠玉の父親が淑鳳雲であったということになった。


だって、李翠蓮の父が淑鳳雲であるとするのなら―……同性の結婚は禁忌であると、宵法で定められているのに、それを破ってまで、黎祥が翠蓮を寵愛することは罪だとされるからだ。


その罪を全て翠蓮に押し付けることも出来るが、押し付けてしまえば、代償は翠蓮を含めた李家に降り掛かってしまう。


それは黎祥自身も、翠蓮も、本願ではない。


「―さて、どうせなら、後宮全体の治療、あんたらに手伝ってもらうかな」


皇太后を慰め終わった翠蓮は、もっと驚くと思われたが、意外に翠蓮は平然として、変わらずに二人に声をかける。


「豹揮、清宸……」


皇太后はふたりを見て、涙を零す。


二人は―豹揮兄上は優しく、清宸は戸惑いながら―笑うと、


「では、また。会いに来ます、母上」


「お、お体に気をつけてくださいっ」


そう言って、すたすたと先を歩いてく翠蓮のあとを追いかけて行った。



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