【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「黎祥のこと……陛下のことを愛しているんだろ?」
(何度、何度、私は繰り返すの―……)
何度、思い出しては泣いて、嘆いては苦しんで、
捨てられればいいのに。
そうすれば、夜だって……寵姫でいられている間に、夢を見ずに済むのに。
愛されたい。
愛したい。
抱きしめあって、どこまでも、あの人の横にいたい。
それが、叶うのなら―……。
「……嫌な予感がしたんだよな」
「え?」
「いや……ごめんな、翠蓮」
「どうして、豹揮が謝るの……」
彼は悪くない。
八つ当たりしているだけ。
実際、どうすればいいのか分からない星は、心配そうに翠蓮を見ていて。
「―翠蓮!」
声を聞き付けたのか、扉から顔を出した祐鳳兄様を見て、翠蓮は素直に抱きついた。
「翠蓮……」
ぎゅう、と、抱き締められる。
頭を抱え込まれて、温もりに頬を寄せる。
「……辛いのなら、やめればいいのに」
兄の声は暖かくて、頭を撫でてくれる手も優しくて、翠蓮は兄の服を握り締めた。
辛くても、やめられないのが恋というもの。
それなら、やめるには彼のことを見る度に高鳴ってしまう、この心臓を止めるしかない。
(兄様、恋ってそういうものなのよ―……)