【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
***
翠蓮が兄に縋って、宮の中に連れていかれるのを眺めていると、星が無言で衣の裾を引っ張ってきて。
「……どうした、星」
「どうして……」
「ん?」
「どうして、兄上は"嘘”をついたの?」
暗い顔をした、星。
「何を言っているんだ。嘘はついてないじゃないか。お前と私の母上は、ちゃんと皇太后……「そうじゃなくて!!」……」
大きな声を出す、星。
「僕、知っているんだよ。僕は翠蓮が幸せならって、見過ごしたよ。翠蓮のことは大好きだし、いっぱい助けて貰ったからね。この際、自分が皇子とか言われても、実感ないから、どうでもいい。でも、翠蓮が泣くのは嫌だよ!兄上!!」
「……星、いや……清宸」
「ダメだよ、兄上……。翠蓮を悲しませるのだけは、ダメだ。黎祥兄上と翠蓮がどんなに愛し合っていたとしても、身分の壁は壊せないんでしょ?なら……」
「…………そうだね。これは、私の自分勝手な考えだ。でも、私も悩んだんだよ。悩んで、暫く、観察して……気づいた。黎祥には、翠蓮が必要だと」
「……っっ」
星も気づいているのか、瞳を揺らす。
「分かるだろう?下町で見た、黎祥の幸せそうな笑顔。少なくとも、私は見た事なかったよ。彼が辺境に飛ばされるところ、見ていたけれどね」
……皇族の証である、赤い瞳。
それを持つものが、翠蓮と笑いあっていた時……豹が焦る傍ら、何も知らない星は言ったのだ。
翠蓮が兄に縋って、宮の中に連れていかれるのを眺めていると、星が無言で衣の裾を引っ張ってきて。
「……どうした、星」
「どうして……」
「ん?」
「どうして、兄上は"嘘”をついたの?」
暗い顔をした、星。
「何を言っているんだ。嘘はついてないじゃないか。お前と私の母上は、ちゃんと皇太后……「そうじゃなくて!!」……」
大きな声を出す、星。
「僕、知っているんだよ。僕は翠蓮が幸せならって、見過ごしたよ。翠蓮のことは大好きだし、いっぱい助けて貰ったからね。この際、自分が皇子とか言われても、実感ないから、どうでもいい。でも、翠蓮が泣くのは嫌だよ!兄上!!」
「……星、いや……清宸」
「ダメだよ、兄上……。翠蓮を悲しませるのだけは、ダメだ。黎祥兄上と翠蓮がどんなに愛し合っていたとしても、身分の壁は壊せないんでしょ?なら……」
「…………そうだね。これは、私の自分勝手な考えだ。でも、私も悩んだんだよ。悩んで、暫く、観察して……気づいた。黎祥には、翠蓮が必要だと」
「……っっ」
星も気づいているのか、瞳を揺らす。
「分かるだろう?下町で見た、黎祥の幸せそうな笑顔。少なくとも、私は見た事なかったよ。彼が辺境に飛ばされるところ、見ていたけれどね」
……皇族の証である、赤い瞳。
それを持つものが、翠蓮と笑いあっていた時……豹が焦る傍ら、何も知らない星は言ったのだ。