【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



『豹……あの子はね、とても弱いの。祐鳳たちの真似して、強くあろうとしているけど……本当は泣き虫で、しっかりなんてしてないのよ。―好奇心は旺盛だけど』


病床で、困ったように笑った翠蓮の母親。


『だからね、貴方を友人の子供だと見込んだ上で、お願いするわ』


翠蓮の母親は、当時、皇后から皇太后となったばかりの母上と友人関係にあった。


だからこそ、豹と星を引き取ったんだと。


下町での名前をくれたのも、あの人たちだった。


『祥基にも、お願いしているんだけどね……』


この時、既に自分の死を覚悟していたんだろう。


毅然とした姿勢で、豹揮を見た翠蓮の母―白蓮さんは。


『意地張って、常に背筋伸ばしているあの子のことを置いていきたくはないけれど……人は寿命に逆らえないもの。
―だから、お願いします。
変な方向に好奇心が旺盛で、怖いもの知らずだとは思うけれど、決して強いわけでも、しっかり者でもないあの子を……
自分が弱いということを忘れてしまっている、私の可愛い娘を、翠蓮を、いつか、誰かに、託して欲しいの。
祥基たちと一緒に、あの子が心から笑える相手の元へ、甘えられる、背筋を少し曲げて泣ける、あの子の全てを受け入れて愛してくれる人を、見つけて欲しいの。
そして、もし、そんな人が見つかって……でも、手が届かないというのなら、決して、諦めさせないで。
諦めたって、何も得られない。
あの子が諦めてしまったのなら、皆が諦めないであげて。
例え、どんな所へ行っても、大丈夫よ。
だって、私と飛雲……鳳雲様の娘だもの』


涙ながらにも、そう、言い残した。


そして、その翌日、静かに息を引き取ったのだ。


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