【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
隠し事
「……落ち着いたか?」
「ごめんなさい、兄様」
温かい蜂蜜湯を呑み、息をつく。
蜂蜜は薬用として使われることの多いもので、少し、分量を誤ると大変なことになるのだが、流石、兄様だ。
分量を誤ることなく、翠蓮に差し出してきた蜂蜜湯はとても美味しかった。
「……………皇帝の愛は辛いか?」
二人っきりの部屋の中で尋ねられて、翠蓮は動きを止めた。
「何言ってるの、この道を選んだのは、自分よ?愛されることよりも、私は……そんなことより、兄様、あのね、豹と星が皇子ってこと、知ってた?」
上手く笑えてない自信があった。
だから、話題を逸らす。
すると、
「……父上から聞いていたからな」
と、兄は言って。
「……じゃあ、父様が淑鳳雲っていう、名前だったのは?」
その事について、兄様は知っていたのか。
翠蓮の言葉に一瞬、驚いた顔をしたあと……首を縦に振った。
「鳳雲様、って、皇太后様が泣いていたわ……黎祥も、色んな人が存在を覚えてて……父様を殺したの、先帝だったってこと、知ってるつもりだったけど……っ」
「翠蓮、」
「ねぇ、父様がどうして、先帝に捕われたのか……そして、殺されたのか、兄様は知っているんでしょ?」
翠蓮は祐鳳の衣を掴んだ。