【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「想像できるかい?翠蓮」
「え……?」
「多くものに絶望を繰り返させた、先帝時代。積もり募った、復讐心。各地で起こった、ささめ雪が……つもりに積もったら、何になるか」
「………………まさか」
「君と黎祥の考えだと、犯人は複数だったよね?―その通りだよ。誰もがみな、己の憎しみを抱いてる」
「その為に、行動したのだとしたら!」
「そうだね。多くのものが、消えてしまうね」
「…………いつから、気づいてっ」
「言っただろう?僕は、"死に損ない”の皇子だと。僕の声に耳を唯一、傾けてくれる黎祥にすら近づけない。だから、君に会いたかったんだよ。君ならきっと……信じられるから。だって、白蓮の娘だし」
その時、外から人々の騒ぎが聞こえた。
(やっと、見つかってくれたかー)
これで、自分の苦労も見舞われた気がする。
「何事で……っ」
「行ってみようか?翠蓮」
「……っ、何を企んでいらっしゃるのですか」
「別に、何も?」
(この事件の真相を全て暴いた時、君は少なからずとも、涙することになる)
だからこそ、黎祥の妃となるように仕向けたのだ。
彼女が……最期まで、白蓮が憂いていた君の存在。
大切な、宝玉のように愛され、大切にされた君。
『ハハッ、兄上の子供だというのに、流雲は策士だな』
『陛下は単純な方ですものね』
『これ、二人して、祥星様を愚弄するでない』
―二人が遺した、君が一人で嘆くことのないように。