【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―た、助けてください……っ」
小さな、泣いた男の子が駆け込んできた。
浅葱色の衣に身を包み、年頃は五、六歳。
小動物のような見た目で、こいこいと、翠蓮を手招く。
「黎祥ー!急患が来たから、私、行ってくる!!」
裏に向かって叫ぶと、
「急患か。私は……」
と、黎祥がすぐに表に出てきた。
「大丈夫。ここ、よろしくね」
「承った」
診察所と子供たちを黎祥に託し、急患用の薬箱を持って、男の子について行く。
「どうしましたっ?」
家を出て、少し先のところに蹲っていた銀髪の青年。
傍らには、黒髪の赤い衣を着た男の子か女の子かしれぬ子が立っていて。
「すいません…っ…」
弱々しい声を出した青年の顔は青白く、銀髪がかかって、表情に翳りが出る。
「もう大丈夫ですよ。治療しましょうね」
足から流血している彼は、時々、顔をゆがめる。
腹を押さえるあたり、そこも傷ついているのだろうか。
これは、薬箱では手当できない。
「お腹も、ですか?」
「あ、いえ―……」
「あのね、伯怜(ハクレイ)ね……」
先程、家に駆け込んできた少年が、翠蓮の服の裾を引っ張って言うことには。