【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「少し……栄仲興の、死について」
「……何か、引っかかるのか」
「ええ、まあ……幻芳珠が使われていたのか、それとも、長時間、水に浸かっていたせいなのかはわかりませんが、どうして、発見が遅れたのかと」
考えれば、考えるほど不思議だ。
まだ、寒い時期だから、死体が綺麗だったのは良い。
問題はどうして、夕暮れ頃に発見された?
昼頃に水に落とされたのなら、少なくとも、誰一人か気づくはずだ。
あそこの上に登れば、嫌でも目立つのだから……。
「…………まさか」
「ん?」
「陛下っ、少し、失礼したいのですが」
「……何か、知りたいことが?」
「ええ。急ぎです」
「余もついていこう。それならば、許可できる」
「ありがとうございます」
勿論、これはいけないことだ。
できるのは、気心が知れているからと……ここの宮は他の妃や、皇子の密偵が入れないような、そんな作りになっているから。
「…………やっぱり」
臥室から出て、翠蓮の研究するための部屋に駆け込んだ。
資料を引きずり出し、幻芳珠についての文献を探る。
大変貴重な薬草であるがゆえ、こうして、文献に残ることは滅多にない。
おまけに全貌がまだはっきりと分かっていない、そんな毒。