【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



聡明で、調べてみれば、李将軍の実妹の娘だというでは無いか。


勿論、そのことは男も知った時は驚いていて、彼女自身も知らないであろう。


その夫……男と少女の父親もまた皇族出身とかいう、かなり、身分が高い血筋だそうで、自分が付き合っている男の洗練された動作や、見た目、顔立ちに理解した。


皇族の血が入っているのなら、それもそうか、と。


育ってきた環境のせいか、猜疑心が強く卑屈に育った私の母は東方の異民族の族長の娘であり、この国によって滅ぼされたと聞いている。


目の前で、あちらの旦那を切り殺されたと……そして、無理やり妻にされて、私を産んだというのだ。


そりゃあ、私のことを愛せなくて当然だと思った。


それと同時に、父親に対して、怒りが湧いた。


寒い冬の朝。


母は首を切って、庭の池で浮いていた。


死したなお、穏やかな笑みを浮かべていた母にとって、この家での暮らしは苦痛に過ぎず、先に逝ってしまった夫と子供の元に向かいたかったんだろうと、母の冥福を毎日、今でも祈る日々。


そして、とうとう、父を殺した。


まず、人から聞いた情報だが、幻芳珠は人の体の腐敗を遅めるらしい。


であるから、まず、発見を遅らせるためには駆風(体からガスを抜くこと)を行わなくてはならなかった。



< 482 / 960 >

この作品をシェア

pagetop