【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「翠蓮!」
「あ、黎祥……」
「大丈夫か?」
伯怜を抱えた翠蓮を見て、黎祥が駆け寄ってくる。
すぐに代わってくれたけど……
「黎祥、あんたも怪我してるんだから」
一応、まだ、完治はしてない訳で。
「良いから」
翠蓮の言葉なんて無視して、診察所に向かう黎祥は振り返ると、
「おいで、翠蓮」
と、微笑んでくる。
(美形が二人並ぶと、毒だわ……)
なんて、くだらないことを思ったりもしたけど、翠蓮は黎祥に優しくされることが好きで。
彼の微笑みを見る度、幸せだ、と、思っている自分がいることも自覚していた。
「黎祥ー、その人、誰?」
「急患」
「僕ら、帰った方がいい?」
「いや、裏にいろ。すぐに戻るから」
そっと、褥に伯怜を寝かせ、黎祥は棚を開ける。
「翠蓮、傷薬だけでいいか」
「そうね……包帯とかも欲しいわ」
「分かった」
手際良く、薬箱に足りなかったものを用意してくれた黎祥は、
「何かあったら、呼んでくれ」
と、裏の子供たちのところへ行く。