【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「良い、右腕の方ですね」
荒れた呼吸を繰り返しながら、伯怜さんは言う。
「そうですか?」
「はい」
傷薬を塗って、包帯を丁寧に巻く。
「龍くん、大丈夫……?」
「平気だよ。ごめんね、麗々」
何故か、伯怜さんのことを龍くんと呼ぶ麗々くんは、翠蓮の手元をガン見しながら、
「伯怜、死ぬんじゃないぞ」
「ハハッ、妖々、僕が死なないのは、君が一番知っているだろうに」
「そなたにはまだ、"王”がおらぬからの」
不思議な三方だ。
でも、まぁ、人には色々あるという事だし。
「よし、完了!大体、傷が治るのはひと月くらいでしょうか……それまで、激しい行動は控えてください。それと、これは傷薬です。綺麗に傷口を洗って、お使いくださいね」
ひと月分の、薬を手渡す。
すると、
「有難いですが、今、手持ちがありません。ですから、薬は……」
と、伯怜さんが断ってくる。
「お金なら、要りませんよ?」
「けど、ここは診察所で……」
「困っている人を救うためにやっているんです。ですから、どうか気にしないで、お持ちになって」
翠蓮がそう笑いかけると、
「有難うございます」
と、笑って。
「いえいえ」
困った時は、お互い様だ。
祥基にはお人好しすぎると、痛い目にあうぞと言われてるけど。
やっぱり、放っては置けないから。