【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―うん。静苑と仲良さそうで、笑っていたよ。そして、僕も相談を受けていたんだ。彼女からなんだけど、行方不明の妹を、探して欲しいと」
……翠蓮の考えを覆し、さらり、と、答えを示した流雲殿下。
(これは、彼にとって答えていい話……)
答えた流雲殿下の瞳は優しさを孕んでいて、きっと、嘘はついてない。
「ほっ、本当ですか!?」
「うん。僕は後宮から出られないし、会わせることは出来ないんだけど……そうだな、栄貴妃に頼んでみた?翠蓮」
「ええ。"例の事”と交換条件で……」
例の事というのは、栄仲興殺人に関するもののことである。
「そうか。……会えるといいね、杏果」
「はい……はいっ!ありがとうございます!」
涙目で深く頭を下げる杏果を見て、翠蓮は笑みを漏らす。
「杏果、良かったね」
「翠蓮のおかげよ!あんなに探して、見つからなかったのに……本当に、ありがとう!!」
「何言ってるの。私は何もしてないわよ。でも、栄貴妃様と約束を取りつけておいてよかったね」
これで、朱杏果のことはすんだ。
問題は、杏果をどうやって下町に帰すかだ。
思った以上の速さで解決してしまったから、そこまで考えてなかったな。
まさか、栄将軍の奥方になっているなんて……変な偶然あるもんだ。
翠蓮がこれからのことを思案していると、隣で杏果は手を弾いて、
「―それで?あと、次は後宮の事件の方よね?約束を守ってくれたんだもの!私、精一杯、貴女の力になるわ!」
と、翠蓮に向かって言ってきた。
「……」
(……どうして?)
戸惑っていると、そんな翠蓮の顔を見て、杏果は
「え、翠蓮……?何を、そんなにキョトンとしているの?」
と、困り顔された。