【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
『翠蓮』
暖かな声が、きっと、今宵も翠蓮を呼ぶだろう。
そして、思い出す度に涙する。
(……あなたのそばには、居られないから)
それを思い知るから。
「……辛いね」
優しい声が、降る。
頭を、撫でられる。
「栄貴妃も、ずっと、ずっと、孤独だったんだろうね」
「……」
「犯人たちにも、それぞれに理由があって、抜け出せない苦しみの中でもがいてる。全てがわかった後でも、彼女たちを裁かなければならない日が来ても、それでも、彼女達が救われる道があると良いね」
(……そうか。流雲殿下は、"だから”)
流雲殿下は名前の通り、まるで、雲のような人だ。
ふわふわしてて、掴みどころがわからない。
(でも、だからこそ)
だからこそ、味方でいてあげることができるんだ。
皇帝でもなく、一人の親王で。
何人の嘘も、謗りも、何もかもを受け流せるから。
だから、味方でいてあげられる。
弱く、復讐に囚われてしまった花々の。