【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



儒学の四書五経(儒教の教典で重要な9種の書物のことで、四書は、「大学」「中庸」「論語」「孟子」、五経は、「詩経」「書経」「礼記」「易経」「春秋」)は勿論のこと、詩と賦(漢詩と用法を用いないで感じたことをありのままによむ叙述法の1つ。「詩経」の1つ)も必要だというのだから―……確かに、ろくな教育を受けられない庶民には、難易度の高いものである。


つまり簡単に言うと、(面倒くさい単語を並べまくったけど)そんだけ難しい試験という事だ。


それを乗り越え、その次にある殿試で上位三名だから……優秀度でいくならば、かなり頭いい……いや、そんな言葉では表せないほどである。


官僚としての将来は約束され、官僚機構の頂点に立つ進士は一族を含めて、栄華を極める。


しかも、科挙は恐ろしく、精神を追い詰める作用があるらしい。


毎回、試験勉強と試験での緊張で精神が壊れたもの、過労死したもの、自殺が多いのだと聞く。


だから、兄がなりたいと言った時も、翠蓮は反対した。


兄に、死んで欲しくなかったのだ。


翠蓮の父は官吏であったが、そう高くない地位であり、薬にも毒にもならない人間だった。


兄が努力していたのは知っていたが、それでも、反対せずにはいられなかった。


結局、兄は翠蓮の手を振りほどいて行ってしまったし、どんな結果になっても、迷惑はかけないと両親に言い残して行ってしまったから……きっと、どんな結果になってても、翠蓮の元に連絡が来ることは無い。


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