【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
自分の在り方
「……はい。これで、大丈夫。一通りの治療は済みました」
少し毒のせいか、爛れてしまった部位に包帯を巻き付け、薬を処方する。
「豹、どうやら、血行状態も良くないみたいだから、波路琉(バジル)も処方してやって」
「わかった。―次はどこへ?」
「先に、星や鈴、桂鳳と次の場所へ行ってるわ」
「終わり次第、すぐにむかうよ」
軽く言葉を交わして、立ち上がる。
後宮内。
呼ばれると、右へ左へ、身分関係なく。
走り回る翠蓮に、
「ありがとうございましたっ!」
倒れたものを大切に思うものは、心より感謝してくる。
噂の中では、翠蓮が薬師として、どの身分のものにも優しいのは、ただの金品目当てだという話もあるものだから、見た後に必ず、金品のものを患者が差し出してくるのが難儀であるが、まあ、翠蓮はそれを受け取るために活動している訳では無いので。
今回も変わらず差し出された金品を丁寧に返し、
「私にあげず、寝込んでいる彼女に滋養あるものを与えてください。何かありましたら、龍睡宮へどうぞ」
と、微笑んだ。
「で、でも……」
それでも、と、引き下がれないらしい彼女達。