【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「翠玉、なんかあった?」


次の患者の元へ向かう道すがら、不思議そうに尋ねてくる鈴華様。


「元気がないって言うか……顔色、悪いよ?」


「え……」


自分の頬に手を当ててみるけど、よく分からない。


確かに、少し眠いけど……。


「昨日の夜、陛下と過ごしたのよね?もしかして、一晩中、なの?」


後宮育ちの彼女は幼いながらに男女のあれそれを理解していて、翠蓮が顔色が悪いことを前向きに考えたらしい。


でも、そんなことはなく。


「いえ。大切な話をしたのは、事実ですけど……」


「けど?」


「ちゃんと休みました、よ……?」


「そんな顔色じゃ、信用出来ないわ。昨夜は夜伽、してないわよね?」


「…………ま、まあ?」


「間があったわよ?」


本当、このおませな姫様にはかなわない。


鋭く突っ込まれて、苦笑い。


「……最後まではしてません。私が、気分が悪いのを理由に、拒否しましたから」


「えっ……」


「それ、大丈夫なの?」


「だから、無理はダメって言ったのに!」


顔色を変えた桂鳳、心配そうな星、怒る鈴華様。


「気分が悪かったの?ねえ、どうなの??」


詰め寄られて、どうすれば……と、後ずさる。


「私が、あんな話をしたから……」


「いや、桂鳳のせいじゃないから!」


桂鳳は桂鳳で、自己嫌悪に陥ってるし……とか、叫んでいると、また、吐き気に。



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