【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「翠蓮、毒を飲んだ?」
「……今は飲んでない」
「今はってどういうこと!?」
「しーっ!鈴華様!!」
……昔、調合をする度に、実験として飲んでた毒。
(だって、山で取ったよくわからない薬草は、自分で確かめた方が早いもの……)
お陰様で、毒の方には明るくなり、毒に丈夫な体が出来たんだが。
(その度に、豹と星に怒られて、殴られたんだよなぁー)
勿論、毒を吐かせるためである。
飲んでないというけど、星には疑いの目を向けられるばかり。
「……夢を見たんですよ」
「夢?」
「悪夢なの?」
「まあ、……」
耳から離れない、あの、悲嘆にくれた絶望の声。
別に、魘されることは無いけど……流石に、黎祥に心配をかける訳にはいかないから。だから、寝なかっただけの話。
「じゃあ、寝不足で顔色が悪いのね?」
「でも、昔から見ているけどさ、翠蓮、一日二日寝ないことなんてざらじゃん」
「……っ」
鈴華様の前で、さっきから余計なことを……っ!
「ええ!?じゃあ、やっぱり、寝不足のせいじゃないじゃない!悪夢のせいなの?それとも、具合が悪い?多くの患者を見ているんだもの!当然よね!!」
「いやいや!治療法は間違ってませんし、毒には触れてませんから!」
「じゃあ、何で、そんなに顔色悪いのよ!私、姉様たちに、翠蓮の元気な姿を見てくる!って言ってきたのに、元気そうじゃない!!」
鈴華様が後宮に来て、三月(3ヶ月)ほど。
見た目を弄り回せば、姉の麟麗様みたいに皇族の象徴である赤い目を持っていないので、鈴華様と分からないのが、幸運。
立ち振る舞いとか、麟麗様の教育のおかげか完璧すぎて、崩すのには苦労したけど……まぁ、隠れて行動する程度には、一女官となれた。