【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―


目の中も覗き込まれ、脈も測られる。


一通りの身体検査を行った後、


「毒じゃないし、風邪でもなさそうだな」


と、結論を出した豹。


「最近、寝てるか?」


「ん、んー、微妙。悪夢見てるし……陛下の伽もあるから」


「それは仕方ない。でも、朝寝坊はできているんだろ?」


「陛下を見送った後、寝てるよ。ちゃんとそれなりに寝て、行動しているはずなんだけど……ふぁ、この通り、眠くて」


欠伸しながらそう言うと、豹はひとつ頷く。


「なら、無理は禁物だな。今日は一通り回ったら、宮で大人しくしておこう。体調不良で、陛下の伽を断るのも手だ」


「でも、陛下の命令よ……?」


「体調悪いくせに、お前が無茶する必要はないだろう。妃は他にも多くいる」


(他……)


その言葉に傷つく胸に、うんざりだ。


黎祥の隣にいることは選択しないのに、黎祥が違うお妃様と過ごすのは、嫌だなんて。


(我ながら、わがままになったものだなあ……)


「とりあえず、殿下が待っておられるだろう。行こう」


豹が荷物を持ってくれる。


そう、明恩宮に来たのは、第九皇子の雄星様の様子伺いの為だ。


あの後から、ずっと、定期的に通っている。


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