【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



豹を先頭に歩きながら、心配そうな桂鳳に微笑んでいると、


「―無茶はダメじゃぞ」


と、どこから現れたのか、飛燕が言ってきて。


「うわっ!吃驚した……」


軽く仰け反ると、まるで、鈍器で頭を殴られたような、血が引いていくような眩暈がして、足元が振らつく。


「―おっと、大丈夫ですか?」


……そんな翠蓮を、背後から支えてくれたのは飛龍。


本当、どこから現れているのやら。


「ありがと……どこにいたの?」


お礼を言って、体勢を立て直す。


すると、飛龍は。


「私たちは貴女の守護ですから。見えなくても、貴女を守るため、そばにいますよ」


と、微笑み返してきた。


老若男女、引きつけるような笑みだ。


もし、彼が人間であったのなら、大変な騒ぎになりそう。


「私のそばに……」


「いつ何時、何があってもいいように」


正直、翠蓮の今の立場は危うかった。


バレてしまえば、本当に未来はない。


そして、毒の犯人を暴こうとしているのだ。


行動に気づかれてしまったら、知らず知らずのうちに亡きものにされても仕方ない。


その見えない脅威から守るため、日夜、交代制で彼らは張ってくれているらしい。



< 549 / 960 >

この作品をシェア

pagetop