【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
豹を先頭に歩きながら、心配そうな桂鳳に微笑んでいると、
「―無茶はダメじゃぞ」
と、どこから現れたのか、飛燕が言ってきて。
「うわっ!吃驚した……」
軽く仰け反ると、まるで、鈍器で頭を殴られたような、血が引いていくような眩暈がして、足元が振らつく。
「―おっと、大丈夫ですか?」
……そんな翠蓮を、背後から支えてくれたのは飛龍。
本当、どこから現れているのやら。
「ありがと……どこにいたの?」
お礼を言って、体勢を立て直す。
すると、飛龍は。
「私たちは貴女の守護ですから。見えなくても、貴女を守るため、そばにいますよ」
と、微笑み返してきた。
老若男女、引きつけるような笑みだ。
もし、彼が人間であったのなら、大変な騒ぎになりそう。
「私のそばに……」
「いつ何時、何があってもいいように」
正直、翠蓮の今の立場は危うかった。
バレてしまえば、本当に未来はない。
そして、毒の犯人を暴こうとしているのだ。
行動に気づかれてしまったら、知らず知らずのうちに亡きものにされても仕方ない。
その見えない脅威から守るため、日夜、交代制で彼らは張ってくれているらしい。