【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



「どうじゃ?翠蓮」


両手広げて、見せてくる飛燕。


何か……すごく複雑だけど、美人は美人。


「…………まぁ、いいんじゃない?」


絹糸のような黒髪、切れ長の目に、柳の眉、優美な曲線の輪郭―……これは、女でも落としてしまうのではないかという、顔。


(男にも、女にも見えるな……あ、宦官なら、話は通じる気がする……)


宦官というのは大切なものを失ってしまった男を指すが、それはまあ、中性的な姿をしている。


その説を使うのなら、飛燕の姿を誤魔化すことも出来る気がするが……。


(龍神を、宦官呼ばわりってどうよ?)


そういう問題が出てくるのである。


「なんじゃ、乗り気じゃないな」


「だって、美しすぎるわ。頼むから、御大尽に目をつけられないでね?」


「うむ。わかっておる」


力いっぱい頷いてくれるのは結構だが、本当にわかっているのだろうか。


「翠蓮、僕も変身する?」


裾を引っ張られて、目を向けると、純粋な瞳を向けてくる飛雪。


「どちらでもいいけど……」


「じゃあ、僕は翠蓮の侍女になるね」


身を翻した飛雪は、すぐに侍女の格好になり。


「これなら、一緒に行動してもいい?」


と、聞いてくる。


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